電気窯の電気代計算の方法
お客様が陶芸・ガラス工芸用の電気窯を買おうとお考えの場合、窯本体の購入費以外に考えることは下記ではないでしょうか。
- 電気代
- 修理代
- 部品代
このページでは1番の電気代の計算方法について述べたいと思います。
電気料金の算出
電気代は、どのような方法で計算したらいいのでしょうか?
電気代については各メーカーが単純に料金の想定をウェブなどに記載しています。
しかし、その根拠は細かく記載されていません。
購入したら思ったよりも高い電気代を支払っう場合もあるでしょう。
では電気料金はどのように算出するのでしょうか?
電気代の算出にはご使用になる電気窯の下記の仕様データが必要になります。
次に、前述の項目を細かく説明したいと思います。
- 消費電力は電気窯を稼働させるときの最大の電力値です。
- 電圧に電流値をかけることで算出されます。
- 電圧 × 電流値 = 消費電力
- ですので、電流値が高い窯ほど消費電流値は高くなり電気代も上がります。
- 別の言い方をしますと、最高温度が高い窯、最高温度を陶芸で言うところの”ねらし”で長時間同じ温度で維持する能力にたける窯ほど電流値を高く設定するため消費電力は高くなります。
- 最高温度が低い窯ほど電気代が安いと言うこともできます。
- 例えば、最高温度1265℃の電気窯よりも最高温度1300度の電気窯の方が電気代は高くなります。
- ただし、ここで良く考えなければいけないことがあります。
- それは、1300℃の能力の窯を買っても1250℃で焼成してもいいと言うことです。
- つまり、高い焼成温度の能力を持つ電気窯を買っても、実際は1250℃で焼成すれば電気代は1250℃を最高温度に持つ窯と変わらないと言うことです。
- しかし、最高温度の能力は高いほどいいと思います。それは、低温で焼いても余力があると言うことであり、電熱線の能力を100パーセント使用しないので、寿命も長くなります。
- 小さな車を全力で高速を走らせるのと、大型の車で余裕を持って高速走行するのに似ています。
- あるいは、6畳用のエアコンを6畳に取り付けるのと、10畳用を6畳の部屋に取り付けて余裕で使用するのにも似ています。6畳に6畳用のエアコンを使用する場合は、真夏ではフル回転してエアコンの寿命は短くなると良く言われます。
- 電圧を決めた次に決定すべきものが電流値です。
- そして、抵抗値を加味して電熱線の設計を行います。
- 電流値が高く、抵抗値が低い窯ほど窯の熱量が大きくなります。
- ですので電流値の決定は窯の出力決定に大きく影響し、電気料金にも影響します。
- 電圧は日本では一般的に100Vか200Vの二つのどちらかを選択することになります。
- 当然100Vは200Vよりも低出力になり、小型の電気窯に採用されますが、炉内が狭くなり、陶芸窯として使用する場合は、作品のサイズが小さくなってしまいます。
- 焼成時間も最高温度が高温になればなるほど、長くなります。
- 電気料金の算出には、この焼成時間も大きく関与してきます。
- 陶芸の場合は焼成温度も高く、時間が長いほど電気代は高くなります。
- エルエルキルンでは全焼成時間を1/4のブロック(ステップ、セグメント)に分けて試算するようにしています。
- 実際は細かい上がり下がりの焼成カーブですが、電気代の試算には4段階に想定して算出します。
- この焼成条件も記載されていない場合が多くあります。
計算例
仕様データをもとに下記のように算出してみました。
まず、前述の諸データを収集してノートなどに記載します。
下記はその諸データの用語説明です。
- 電力(W) 電気窯の仕様書かステッカーに記載の電力値です。
- ステップ数 焼成カーブの折れ線の数です。
- 総時間(h) 焼成の合計時間数です。
- 単時間(h/ステップ) 1ステップの焼成に要する時間です。
- 単電力(W) 1ステップの焼成に必要な電力値です。
電力(W) | 10,600 | |||
ステップ数 | 4 | |||
総時間(h) | 14 | |||
単時間(h/ステップ) | 3.5 | |||
単電力(W) | 2,650 | |||
ステップ1 | 2,500 | 3.5 | 8,750 | |
ステップ2 | 5,000 | 3.5 | 17,500 | |
ステップ3 | 7,500 | 3.5 | 26,250 | |
ステップ4 | 10,600 | 3.5 | 37,100 | |
電力計(W) | 89,600 | |||
電力計(KW) | 89.6 | |||
単価(円) | 19.52 | |||
電気料金(円) | 1,749 |
グラフにすると下記のようになります。
このようなグラフを描くか、イメージして上記の表を作成してみてください。
このように、電気代というのは自分の焼成するグラフがなければ基本的に算出しにくいものです。
単純に電気代がいくらとか書かれているサイトでは、根拠が乏しく、実際は高い電気代だったりします。
基本的に最高温度が高いほど、昇温が早いほど、高温でのねらしが長いほど電力を多く使用し、電気代が高くなります。
ですので、ご自分の焼成にあった計算をすべきです。
また、電力降下が少しでもあると、だらだらと焼成し続けて電気代が上がります。
この場合は電熱機具の電気に関して理解している方が少なく、窯のせいになってしまいます。
何も外的問題がなければ、一般的に窯の電力値が同じであれば、さほど電気代の違いはないと思います。
窯の壁圧が厚いと燃費がいいと勘違いしている方もおいでですが、壁圧が厚いと壁に熱浸透率が高くなり電気を消費しやすくなります。このことは日本の耐火断熱レンガの製造メーカーとも協議したことがありますが、同じ考えでした。
壁圧は薄すぎず、厚すぎずがいいと思います。
結果として仕様書に記載されている消費電力値が高い窯ほど電気を消費する可能性があるということを知っておいてください。
ただ、電力値の70パーセントを使用したりする場合は別です。